年次有給休暇とは、労働者が、使用者に採用された以降6か月間に所定労働日数の8割以上勤務した場合に、採用後6か月経過した日(これを「基準日」といいます。)以降に、使用者に請求して所定労働日を有給で休みの日とすることです。この休暇は文字通り、所定労働日数に対する8割以上の出勤要件を満たすことにより1年ごとに基準日に新たに年次有給休暇を請求する権利が発生し、休暇日は賃金を受けつつその日の就労義務を免除される、労働者にとっては権利であり、使用者にとっては義務となります。

年次有給休暇については、平成30年6月に成立した働き方改革関連法により、平成31年4月1日から改正労働基準法が施行されています。改正労働基準法では、使用者は、改正法施行日である平成31年4月1日以降に最初に迎える基準日において10日以上の年次有給休暇権が発生する労働者に対して、最低5日以上の年次有給休暇を付与しなければならない義務(これを「時季指定義務」といいます。)を負うこととなっています。使用者の時季指定義務についてはページを改めて説明します。こちらをクリック>>時季指定義務

以下に年次有給休暇について詳しく説明します。

年次有給休暇権の発生要件と付与日数

労働基準法上年次有給休暇は、使用者が労働者を採用し業務に就かせた日以降、その労働者が6か月間に所定労働日の8割以上出勤した場合に、6か月を経過した日(これを「基準日」といいます。)に、使用者に10日の年次有給休暇を請付与する義務を課しています。例えば、使用者が労働者を採用して、その労働者が4月1日から業務を始めたとすると、その労働者が業務開始日以降6か月間に所定労働日の8割以上出勤すると、6か月を経過した日である10月1日に10日の年次有給休暇を請求する権利(=使用者にとっては年次有給休暇を付与する義務)が発生します。

年次有給休暇は、労働者が基準日から1年間に所定労働日の8割以上勤務した場合に、基準日から1年経過した日に新たな基準日を迎え、新たに年次有給休暇を付与する義務が使用者に発生します。労働者が新たな基準日以降1年ごとに所定労働日の8割以上の出勤要件を満たせば、新たな年次有給休暇を付与する義務が使用者に毎年基準日に発生することになります。使用者の年次有給休暇の付与日数は、労働者の勤続年数に応じて、1日または2日ずつ増加します。労働者が採用後初めて勤務を開始した日以降6年6か月を経過すると、使用者はその労働者に対して20日の年次有給休暇を付与しなければなりません。使用者は、労働者が採用後業務を開始した日以降6年6か月経過した基準日以降、毎年の基準日ごとに20日の年次有給休暇を付与しなければなりません。

1週間の所定労日数が4日以下でかつ1週間の所定労働時間が30時間未満の労働者については、年次有給休暇の付与日数は、その労働者の基準日における週所定労働日数に応じた比例付与日数となります。週により所定労働日数が一定ではない場合は、基準日における年間の所定労働日数により年次有給休暇の付与日数を判断します。

なお、年次有給休暇の付与日である基準日については、労働基準法で定める日より早めることはできますが、遅らせることはできません。例えば、使用者が4月1日に業務を開始した労働者に労働基準法上の基準日である10月1日を待たずに、5月1日を基準日として年次有給休暇を付与することは許されますが、10月1日を過ぎた12月1日を基準日とするといったことは労働基準法に反することとなり許されません。

労働者の年次有給休暇請求権は基準日から2年で消滅します。したがって、前年に発生した年次有給休暇は繰越しになります。前年繰越し分の年次有給休暇がある場合に、労働者が使用者に年次有給休暇を請求した場合、前年度分の年次有給休暇から消化するのか、今年度分の年次有給休暇から消化するのか判断に迷うことがあります。労働基準法の条文やその解釈からすると、今年度分の年次有給休暇から消化すべき様にも読み取れますが、実際上は前年度分の年次有給休暇から消化しても構いません。この辺りについては、トラブルにならないようにあらかじめ労使間で協議の上、就業規則等で労働条件として定めておくべきでしょう。

年次有給休暇の付与日数については次の図の通りです(出典:厚生労働省「リーフレットシリーズ労基法第39条」)。

労働者の年次有給休暇の時季指定権と使用者の時季変更権

労働者の年次有給休暇の時季指定権

使用者は、労働者に対して基準日ごとに年次有給休暇を新たに付与しなければなりませんが、具体的な付与義務は、年次有給休暇権を有する労働者の請求により発生することになります。例えば、10月1日が基準日である労働者が、11月の所定労働日である、15日から18日までの4日間を指定して事前に年次有給休暇を請求したときに、使用者はその労働者に15日から18日まで計4日の年次有給休暇を付与しなければなりません。

労働者が、年次有給休暇日を指定して請求する権利を年次有給休暇の時季指定権といいます。労働基準法上は、労働者の時季指定権は、年次有給休暇とする日の前に年次有給休暇とする日を使用者に通知することによって具体的に発生します。したがって、労働者が所定労働日に欠勤しその日以降に欠勤日を年次有給休暇日と指定する場合、使用者は労働基準法上、その欠勤日に遡って年次有給休暇を付与する義務を負うものではありません。もっとも、会社の就業規則等で労働条件として労働者に年次有給休暇の遡及請求を認めている場合は、労働基準法で定める基準を上回る労使間の個別の条件が優先されることになるので、就業規則等で定める年次有給休暇の遡及請求の要件を労働者が満たしている場合には、使用者はその労働者に年次有給休暇を付与する労働契約上の義務を負うことになります。

使用者の年次有給休暇の時季変更権

使用者は、労働者が年次有給休暇を請求したときは、指定した日に年次有給休暇を付与しなければなりません。もっとも、労働者が年次有給休暇日として指定した日に、その労働者に会社を休まれると、業務が著しく滞るなどの事情がある場合、その労働者に対して、年次有給休暇日の変更を求めることができます。これを使用者の年次有給休暇の時季変更権といいます。使用者が年次有給休暇の時季変更権を行使できる場合はかなり限定的であり、単に人手が足りないという程度では使用者の時季変更権は通常認められません。

なお、使用者の時季変更権は、あくまでも労働者が請求した年次有給休暇について年次有給休暇とする日の変更を求めるものにすぎず、年次有給休暇を付与しないということは、使用者の年次有給休暇付与義務の不履行に当たり認められません。年次有給休暇についての労使トラブルで、退職届を使用者に提出した労働者が、退職日までの所定労働日を年次有給休暇として請求したときに、使用者が業務の引継ぎが十分にできないなどとして、その労働者に対して年次有給休暇を付与しようとしないというケースがあります。当然ながら、労働者が退職した以降は、労使間に労働契約関係がありませんので、使用者の年次有給休暇の時季変更権は、労働者が退職する日までに年次有給休暇日として指定していない日がある場合にのみ行使できることになります。

例えば、労働者が使用者に対して、民法の一般原則に基づいて、退職日の2週間前に退職届を提出して、併せて退職届を提出した翌日以降退職日までの間の所定労働日について年次有給休暇を請求した場合、使用者は年次有給休暇の時季変更権を行使できる余地がありません。使用者はこういった事態に直面しないよう、常日頃から労働者の年次有給休暇管理を行い、労働者に適切に年次有給休暇を付与して、労働者の退職時にまとめて年次有給休暇を消化されないよう注意を払っておくことが肝要です。やむを得ず退職する労働者に引継ぎ等で退職日まである程度の出勤を求めざるを得ないときは、その労働者とよく話し合ったうえで、退職日までに消化しきれない年次有給休暇については、会社で買い取るなどして、トラブルにならないよう配慮すべきでしょう。

年次有給休暇の計画付与

労使間で労使協定を締結することにより、使用者は労働者の有する年次有給休暇のうち5日を超える部分について、計画的に付与することができます。

労使協定で締結すべき事項は次のとおりです。

  1. 計画付与の対象となる労働者
  2. 対象となる年次有給休暇の日数
  3. 計画的付与の具体的な方法
  4. 年次有給休暇の付与日数が少ない労働者の取り扱い
  5. 計画的付与日を変更する場合

計画的付与の方法としては、①事業場(全社)一斉付与、②部署(班)別付与、③個人別付与の3つが考えられます。

年次有給休暇の時間単位の付与

労使間で労使協定を締結した場合、労働者の有する年次有給休暇のうち5日を上限に、労働者の請求を受けて、使用者がその労働者に対して時間単位で年次有給休暇を付与することが認められています。

なお、平成31年4月1日施行の改正労基法上の使用者の時季指定義務に関して、5日の時季指定義務には時間単位の付与を認めていません。

年次有給休暇日に対する賃金

年次有給休暇を取得した労働者に対する賃金の支払いは、通常支払われる1日当たりの賃金か、平均賃金のいずれかです。なお、労使協定を締結した場合には、健康保険の標準報酬日額とすることも認められています。

通常支払われる1日当たりの賃金は、年次有給休暇として休んだ日に所定労働時間勤務すれば支払われたであろう賃金です。したがって、恒常的に残業が発生しているような場合でも、年次有給休暇日に対する賃金には、残業時間を考慮する必要はありません。
ただし、使用者が午後10時から翌朝午前5時までの夜勤を常態とする労働者に年次有給休暇を付与した場合、午後10時から翌朝午前5時までの労働に対して支払いが強制される1時間当たりの賃金に2割5分以上の割合による割増の深夜手当については、通常支払われる賃金として支払う必要があります。

年次有給休暇を取得した労働者に対する不利益取り扱いの禁止

年次有給休暇を取得した労働者に対して、そのことを理由として、使用者が、その労働者に対する労働条件を不利益に扱ったり、労働者の職務評価に関して低く評価することは労働基準法第136条に抵触し違法無効となります。

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