監督官の仕事

こんにちは
特定社会保険労務士のおくむらです。

今日は、労基署の華、労働基準監督官のお仕事についてお話ししたいと思います。

相談員として、労基署で相談対応業務に従事していると、身近で監督官の仕事を垣間見ることができます。

労働基準監督官の仕事は、大きく分けて、行政職員としての仕事と、司法警察員としての仕事があります。

行政職員としての主な仕事は、監督指導、調査、相談対応等があります。

司法警察員としての仕事は、労基法違反や安衛法違反、最賃法違反等を理由として、事業主や事業の責任者を取り調べ、検察へ送検するものです。ごく稀にですが、特に悪質な事業の責任者を逮捕することもあります。

監督指導業務

監督官は、通常、行政職員として、労働基準法や労働安全衛生法、最低賃金法といった法律に事業場が違反していないか監督しています。そして違反の疑義があれば事業場を調査し、違反が確認されれば当該事業場に対して是正勧告を出し法違反の是正を求めます。是正勧告を受けた事業場は期限内に法違反の状態を解消しその内容を是正報告書に記載して労基署に提出しなければなりません。

また、監督官が事業場を調査した結果、労基法や安衛法等の法違反とは言い切れないものの、改善すべきだと判断した場合は、当該事業場に対して指導票を交付して、改善を求めます。指導票を交付された事業場は期限内に改善内容を改善報告書として労基署に提出しなければなりません。

工場や工事・建設現場での臨検監督では、機械や設備安全対策が不十分で労働者に危害が及ぶ可能性がある場合、監督官は事業の責任者に対して、これら機械や設備等の使用停止命令を出すことがあります。
私が以前、3課制の監督署で勤務していた時、署長である監督官が、とある工場を臨検して、その工場で使用されていた機械に安全装置が設置されていないのを確認して、その機械の使用停止命令を出したようでした。すると、その工場では操業ができなくなったようで、翌日、会社の社長が労基署を訪れ、使用停止命令を何とか解いてくれないかと署長に談判していました。
建物の建設工事現場では、足場の安全対策が不十分で、使用停止命令が出されている例がいくつかありました。建設工事の場合外側にピケを組み立てて工事を行うことが多いですが、このとき必ず外側だけではなく転落の恐れがある内側にも手すりを設けなければなりません。しかし、時々内側の一部分の手すりを省いている現場があるようで、監督官がこういった個所を見つけると、その個所の使用停止命令を出すようです。

事業場の監督指導の契機となるものには次のような場合があります。

申告監督

労働者は、労基法違反や安衛法違反を労基署に申告することができます。労基署が労働者の申告を受け付けた場合、対象事業場を調査します。もっともこの調査は、必ず行わなければならないというものではありませんが、現状、申告を受け付けた場合、労基署は必ず対象事業場を調査しています。

申告で多いのが、賃金不払いを理由とするものです。賃金不払いの内容としては、残業代の不払いが過半数を占めているように思われます。その他には、会社が労働者の同意なく一方的に賃金から修理代と称して賃金を一部支払わない、労働者が会社の社長に退職の意思表示をし、これに怒った社長が労働者の退職後に最終勤務月の賃金を支払わない、労働者が年次有給休暇として休んだ日に対する賃金を支払わないなどがあります。

また、3課制の署に勤務していた時はほとんどありませんでしたが、大規模署では、会社の経営状態が悪化して労働者に対する賃金の支払が止まってしまったということで申告に訪れる労働者も時々あります。

申告は必ず労働者本人が行わなければなりません。しかし、ときには、労働者の家族が会社をどうしても調査してほしいと言って来署することもあります。また、労働者本人が退職後等に、勤務していた事業場に勤務する労働者全体に及ぶ法違反について調査してほしいと求めてくることもあります。こういった場合は、申告ではなく情報提供として受け付けます。受け取った情報は、その内容によりランク分けして、調査するか否か等を判断しているようです。

申告と似たものに、公益通報というものもあります。公益通報は現に事業場で勤務している労働者が、会社の法違反の疑義を通報するものです。申告は退職(解雇)後であっても、労働者自身に係る会社の法違反についてなすことができますが、公益通報は在職中の労働者でなければなりません。公益通報を受けたときは、申告と同様に事業場を調査しなければならないと公益通報者保護法で定められています。

定期監督

定期監督は年度の計画に基づいて、監督官が事業場を予告なく訪問して調査するものです。労災事故が多い業種や過重労働が多い業種等を重点的に監督することが多いようです。

3課制の監督署で勤務していた時、監督官がちょくちょく定期監督に出かけていました。そういったときは、その日の予定表に「定監」と書いてあるマグネットを貼り来署予定時刻を記入していました。定期監督はいわゆる飛び込みで事業場を訪問することが多く、訪問を受けた事業場の中には悪態を付く事業主もいる様で、私にはできないような気がします。

また、定期監督で監督官が一人で訪ねた事業場がやくざの組事務所で、組長さんからいろいろと「オモシロいお話」を聴かされたという監督官もいます。

災害調査

労災事故等が起こった場合、連絡を受けた監督官らは直ちに現場に赴いて災害の発生原因等を調査します。

死亡労災等重大な労災事故が発生した場合、ほぼ例外なく先に警察に通報が入ります。通報を受けた警察は現場に行き、その後警察から労基署に労働者が業務中に死亡したなどと連絡があって、そこから監督官や安全衛生専門官が複数名で現場に急行するという流れがほとんどのようです。

私が、3課制の監督署で相談員の業務に従事していた時、不幸にも死亡労災が発生してしまったことがありました。

冬の雪が舞う寒い日に、刑事さんから連絡を受けた監督課長以下監督官と専門官の3人は、現場用の制服に着替え、デジタルカメラを用意して、念のためにホッカイロを用意して、労基署の公用車の日産マーチに乗って、災害発生現場へ出かけていきました。

集合監督

集合監督とは、労基署から事前に事業場に、労働条件調査等の名目で文書を発し、労基署に事業場の担当者に来署してもらって、労基法違反や安衛法違反等がないか調査するものです。

事業場の担当者が来署する際には、賃金台帳、労働者名簿、就業規則、労働者の出退勤時刻が分かるタイムカード、各種労使協定書や協定届の控等の持参を求めるようです。そして事業場の担当者が記入した自主点検票などと照らしながら、労働者の就業状況等を聴き取って、法違反があればその場で是正勧告書を作成し交付します。

私は以前、社労士の立場で会社の社長さんと一緒にこの集合監督に同席したことがあります。

社長さんは初めて、労基署の集合監督を受けたようで、どう対応したらよいか分からないようでした。
実は、私も社労士として初めての集合監督だったので、同僚の社労士に事前に会って、監督官への対応の仕方や、報酬の決め方等のレクチャーを受けました。

その時の調査では、就業規則を労基署へ届け出ていなかったこと、常勤の事務員に対する健康診断を実施していなかったことについて、是正勧告を受けました。

調査自体は30分もかからず、是正勧告の内容も大事に至る内容ではありませんでした。調査後に社長さんから、「社労士さんが付いていたから大したこともなく終わった」と非常に喜んでもらいました。

集合監督の対象となる業種も年度ごとにおおよそ決められているようです。近年は、毎年最低賃金が上がっていることもあり、統計上、1時間当りの賃金単価の平均が最賃に近い業種に属する事業場などは集合監督の対象になりやすいようです。

許可申請に対する調査

監督官の仕事には、労基法等に基づく、許可申請を受けた場合の調査もあります。

主な許可申請としては、解雇予告除外認定許可申請監視・断続的労働に従事する者に対する適用除外許可申請断続的な宿直又は日直勤務許可申請、などがあります。この他に賃金の立替払い制度に係る「事実上の倒産」の認定申請があります。また許可の最終的可否は労働局で判断するものとして、最低賃金の減額特例許可申請も労基署で受け付けて監督官が調査します。

相談対応・窓口業務

相談者が来署したときに、相談員が他の相談者に対応している場合や、相談員がいない場合は、監督官が対応することになります。

また、各種協定届や、就業規則(変更)届、報告書等の書類を受け付ける業務も行います。これらも相談員が対応できる場合は相談員が行いますが、相談員がいない場合や、協定届や報告等の内容によっては監督官の判断が必要なものがあり、こういった場合には監督官が対応します。現状、専門業務型裁量労働制に係る協定届や、企画業務型裁量労働制に係る決議書や報告書等は、監督官がチェックしています。

説明会等

法令の周知のため、事業場の担当者を招いてセミナーを開催するのも監督官の仕事としてあります。

最近では、来年4月1日に施行される新労基法の説明のために、特別条項付三六協定届を提出に来た事業場の担当者に対してその場でリーフレットを手渡して新労基法の内容を説明したり、希望する事業場に直接出向いて新労基法の説明を行うことも監督官が行っています。

 

 

 

 

 

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