拘束時間と休息期間

拘束時間

(1)拘束時間とは

① 労働時間と休憩期間を合計した時間です。
② 労働時間には、実際に運転している時間や、荷積みや荷卸し作業、整備作業等を行っている時間のほか、荷積みや荷卸しのために待機している時間(=手待ち時間)が含まれます。

(2)1年間の拘束時間の上限

3516時間です。

(3)1ヶ月の拘束時間の上限

①原則 293時間です。
②例外 労使協定を締結した場合に、年間の拘束時間の上限である3516時間を超えない範囲で、1ヶ月320時間まで延長することができます。この延長できる回数は年間6回が上限です。

(4)1日の拘束時間の上限

①原則 13時間です。
②例外 16時間まで延長することができます。ただし、拘束時間が15時間を超える回数は1週につき2回が限度です。
③2人乗務の特例 トラック車内に仮眠できるベッド等身体を伸ばして休息できる設備がある場合に限り、1日の最大拘束時間を20時間まで延長できます。

休息期間

(1)休息期間とは

勤務終了後次の勤務始業時刻までの間の時間(勤務間インターバル)です。但し休息期間に引き続き休日となる場合は、その休日となる時間を除きます。

(2)確保しなければならない1日の休息時間

①原則 継続8時間以上です。
②特例 一定の要件を満たす場合は、当分の間、1回あたりの休息時間を4時間以上とすることができます。
③2人乗務の特例 トラック車内に仮眠できるベッド等身体を伸ばして休息できる設備があって1日の最大拘束時間を20時間まで延長する場合は休息時間を4時間まで短縮できます。
④フェリーに乗務する場合の特例 ドライバーが勤務の途中でフェリーに乗船する場合は、その乗船時間については、休息期間とします。

休日

① 休息期間に引き続く24時間の連続した時間です。原則は休息8時間に24時間を加えた、連続した32時間が休日として確保されなければなりません。
② 2人乗務による休息期間の特例等の場合であっても、休息期間に24時間を加えた連続した時間が30時間を下回ることは許されません。

拘束時間・休息期間の基準となる始業時刻について

休日と次の休日の間の各勤務日の始業時刻は固定されていなければなりません。例えば、休日を日曜日とした場合に、月曜日の始業時刻を午前8時とし終業時刻を翌日の午前1時とした場合、火曜日の始業時刻を午前9時としても休息期間を8時間確保したことにはなりません。
この例の場合、月曜日の休息期間としては、火曜日の午前1時が終業時刻で同じ火曜日の始業時刻の午前8時までの7時間しか休息期間が確保されていないことになります。火曜日の午前8時から9時までの1時間は火曜日の休息期間となります。

始業時刻を変更する場合は、休日を挟む必要があります。

運転時間について

① 1日の運転時間は、特定日を起算日として2日ごとに区切ったときに、その2日を平均して9時間が限度です。例えば、特定日を7月24日とした場合、前日である7月23日の運転時間が10時間、特定日である24日の運転時間が8時間、特定日の翌日である25日の運転時間が10時間であれば、改善基準告示に違反しません。
② 1週間の運転時間は、特定の日を起算日として2週間ごとに区切り、その平均で44時間が限度です。例えば、特定の日を7月1日月曜日とした場合、第1週目の運転時間が46時間で第2週目が42時間であれば、この2週間を平均すると1週間当たりの運転時間が44時間となり、改善基準告示に違反しません。
③ 連続運転時間は4時間が限度です。連続運転時間が4時間に達したときは直後に30分以上の休憩時間を確保しなければなりません。ただし、運転開始後4時間以内に1回につき10分以上の休憩を確保する場合は、休憩を分割することもできます。

時間外労働・休日労働

労働者に時間外労働・休日労働を命じる場合は、時間外労働・休日労働に関する労使協定(三六協定)を締結し、労働基準監督署に労使協定届を提出しなければなりません。
労使協定届には、通常、1日に延長できる時間、1ヶ月に延長できる時間、1年間に延長できる時間の上限を各記載します。
自動車運転者については、時間外労働時間の限度基準(1ヶ月45時間かつ1年360時間)は適用されません。

時間外労働時間の上限の考え方

ア.1日の時間外労働時間の上限の考え方

労働時間が1日8時間を超える場合は1時間以上の休憩時間を確保しなければなりません。そうすると、法定労働時間8時間を超えて1日に延長できる時間外労働時間は最大でも次のとおりです。
16時間(拘束時間の上限)-8時間(1日法定労働時間)-1時間(休憩時間)=7時間

イ.1ヶ月の時間外労働時間の上限の考え方

1ヶ月に延長できる時間外労働の上限は、月の日数の最も少ない2月が拘束時間から法定労働時間と休憩時間を差し引いた時間外労働時間を最も長く設定できるので、2月を基準に検討すると次のとおりとなります。
(ア)1ヶ月の拘束時間293時間の場合
293時間-160時間(28日の月の法定労働時間)-20時間(休憩時間1日1時間としてこれに20日〔160時間÷8時間〕を乗じた時間)=113時間
(イ)1ヶ月の拘束時間320時間の場合
320時間-160時間-20時間=140時間

ウ.1年間の時間外労働時間の上限の考え方

1年間の法定労働時間の上限は2085時間です(365日〔年間の暦日数〕÷7日〔1週間の暦日数〕×40時間〔1週法定労働時間〕)。1日8時間労働の場合の年間の労働日数の上限が260日(365日〔年間の暦日数〕÷7日〔1週間の暦日数〕×40時間〔1週法定労働時間〕÷8時間〔1日法定労働時間〕)であることを考慮すると次のとおりとなります。
3516時間(年間の拘束時間の上限)-2085時間(年間法定労働時間)-260時間(年間の労働日数の上限×1時間〔1日の休憩時間〕)=1171時間

休日労働

休日労働は2週間を通じて1回が限度です。

割増率(中小企業の場合)

トラック運転者の場合であっても、時間外労働、休日労働、深夜労働に対する割増手当については、法定通りです。
(ア)時間外労働に係る割増率は2割5分以上
(イ)休日労働に係る割増率は3割5分以上
(ウ)深夜労働に係る割増率は2割5分以上
(エ)時間外労働が深夜に及ぶときの割増率は5割以上
(オ)休日労働が深夜に及ぶときの割増率は6割以上

長時間労働等による労災の発症リスク

自動車運転者の場合、重大な交通事故の処理や、過重労働、長時間労働などにより、脳・心臓疾患を発症するリスクが他の業種に比べて高いと言えます。平成28年度の脳・心臓疾患に関する労災補償状況では、請求件数及び支給決定件数ともに「道路貨物運送業」が最多となっています。脳・心臓疾患は労働者が死亡したり、治癒した場合でも重度の後遺障害が残ることが多くあります。こういった場合、労災保険では補償されない逸失利益や慰謝料について、使用者が労働者又はその遺族から損害賠償責任を追及されることになります。もちろん、それ以前の問題として、労災により労働者やその家族等が不幸な状況になることは使用者として最大限避ける努力をしなければなりません。

また、過重労働や長時間労働により、自動車運転者が加害者となる重大な事故を発生させた場合、事業主は使用者責任を追及されます。

以上のことから、使用者は自動車運転者の労働時間をできる限り短くするように、配慮する必要があります。

脳・心臓疾患の労災認定基準

発症原因について

加齢・食生活・生活環境等の日常生活や遺伝等の通常考えられ得る要因を超えて、特に過重な仕事が相対的に有力な発症原因であると認められる(=「業務による明らかな過重負荷」がある)ときに労災認定の対象となります。

脳・心臓疾患の対象疾病

脳血管疾患

・脳内出血
・くも膜下出血
・脳梗塞
・高血圧性脳症

虚血性心疾患等

・心筋梗塞
・狭心症
・心停止(心臓性突然死を含む)
・解離性大動脈瘤

業務による明らかな過重負荷

認定要件1 異常な出来事
=「発症直前から前日までの間において、発生状態を時間的及び場所的に明確にし得る異常な出来事に遭遇したこと」

(1)異常な出来事とは

① 精神的負荷⇒極度の緊張、興奮、恐怖、驚愕等の強度の精神的負荷を引き起こす突発的又は予測困難な異常な事態
例:業務に関連した重大な人身事故や重大事故に直接関与し、著しい精神的負荷を受けた場合

② 身体的負荷⇒緊急に強度の身体的負荷を強いられる突発的又は予測困難な異常な事態
例:事故の発生に伴って、救助活動や事故処理に携わり、著しい身体的負荷を受けた場合

③作業環境の変化⇒急激で著しい作業環境の変化
例:屋外作業中、極めて暑熱な作業環境下で水分補給が著しく阻害される状態や特に温度差のある場所への頻回な出入りなどがあった場合

(2)評価期間
評価期間は発症直前から前日です。

(3)過重負荷の有無の判断
① 通常の業務遂行改定においては遭遇することが稀な事故または災害等で、その程度が甚大であったか
② 気温の上昇または低下等の作業環境の変化が急激で著しいものであったか

認定要件2 短期間の加重業務
=「発症に近接した時期において、特に過重な業務に就労したこと」

(1)特に過重な業務とは
日常業務に比較して特に過重な身体的、精神的負荷を生じさせたと客観的に認められる仕事

(2)評価期間
発症前概ね1週間

(3)過重負荷の有無の判断
特に過重な業務に就労したと認められるか否かについては、業務量業務内容、作業環境等具体的な負荷要員を考慮し、同僚労働者又は同種労働者にとっても、特に過重な身体的、精神的負荷と認められるか否かという観点から、客観的かつ総合的に判断する。

認定要件3 長期間の加重業務
=「発症前の長期間にわたって、著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務に就労したこと」

(1)疲労の蓄積とは
恒常的な長時間労働等の負荷が長期間にわたって作用した場合には、「疲労の蓄積」が生じ、これが血管病変等をその自然経過を超えて著しく増悪させ、その結果、脳・心臓疾患を発症させることがある。このことから、発症との関連性において、業務の過重性を評価するに当たっては、発症前の一定期間の就労実態等を考慮し、発症時における疲労の蓄積がどの程度であったかという観点から判断する。

(2)評価期間
発症前概ね6ヶ月間

(3)過重負荷の有無の判断
著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務に就労したと認められるか否かについては、業務量、業務内容、作業環境等具体的な負荷要因を考慮し、同僚等にとっても、特に過重な身体的、精神的負荷と認められるか否かという観点から、客観的かつ総合的に判断する。
業務の過重性の具体的な評価に当たっては、疲労の蓄積の観点から、労働時間の他、以下の①ないし⑥の負荷要因について十分検討する。
① 不規則な勤務
② 拘束時間の長い勤務
③ 出張の多い業務
④ 交代制勤務・深夜勤務
⑤ 作業環境(温度環境・騒音・時差)
⑥ 精神的緊張を伴う業務

(4)労働時間の評価の目安
① 発症前1ヶ月間ないし6ヶ月間のすべての期間にわたって、1ヶ月当たり概ね45時間を超える時間外労働が認められない場合は、業務と発症との関連性が弱いと評価できること
② 概ね45時間を超えて時間外労働が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まると評価できること
③ 発症前1ヶ月間に概ね100時間、又は発症前2ヶ月ないし6ヶ月間のいずれかの期間にわたって、1ヶ月当たり概ね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できること

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