解雇は、大きく普通解雇と懲戒解雇とに分けることができます。普通解雇は使用者の解雇権の行使によるものであり、懲戒解雇は使用者の懲戒権の行使によるものですから、同じ解雇であっても、効力の判断に当たっては、法的な要件は普通解雇と懲戒解雇とでは別々に考慮する必要があります。

また普通解雇は、狭義の普通解雇と整理解雇とに分類することができます。

解雇は、労基法に定める解雇の手続き、つまり解雇予告をなすことが表面上一義的な効力判断の要件となるように思われますが、実質は、解雇理由(または懲戒解雇理由)に該当する事由(解雇の対象となる具体的事実)の有無が解雇の効力の有無を左右することとなります。最近は減ってきたようにも思いますが、事業の経営担当者の中には、解雇予告を適法に行ったから違法な解雇ではない、という主張をする方もいますが、解雇予告を適法に行ったということはどちらかというと二義的な要件に過ぎず、むしろ解雇理由たる解雇事由の有無、もう少し詳しく述べれば、解雇に、①客観的に合理的な理由に値する具体的事実があるか、②社会通念に照らして相当と認められるか(解雇理由があるとしてもその程度の理由で解雇することが社会一般常識に照らして妥当か)という要件事実の有無が、解雇の効力の判断の一義的要件となります。

なお、就業規則の作成義務がある事業場にあっては、労働者を解雇する可能性がある場合、解雇の事由を就業規則に定めておかなければなりません。通常、就業規則に定める解雇の事由をいくつか列挙します。使用者が労働者を解雇した場合に、就業規則に定めていない事由による場合、就業規則に定めがない事由による解雇が許されるのかという点で争いになることがあります。こういった場合は、就業規則の解雇規定をどのように解釈するかの問題になります。解雇規定にある事由を例示的に列挙したという解釈であれば、使用者は就業規則の解雇規定のみにとらわれずに解雇権を行使することができると考えられますが、解雇規定にある事由を限定的に列挙したという解釈であれば、使用者は労働者を解雇する事由を予め限定しているということになり、解雇規定にない事由によっては労働者を解雇できないということになります。

以下に、解雇の効力判断に当たっての要件について説明します。

解雇権の基本的な考え方

使用者の解雇権の法的根拠は、民法第627条1項です。民法第627条1項では、期間の定めのない雇用契約について、各当事者はいつでも解約の申し入れをすることができる旨、定めています。これは、使用者については労働者を解雇する権利を認めたものであり、労働者については会社を退職(辞職)する権利を認めたものです。

ところで民法は、第1条3項で、権利の濫用を許さない旨、定めています。解雇の効力に関しては、この権利濫用法理に当てはめて数多の判断が裁判所から示され、その集大成として最高裁判所が「使用者の解雇権の行使も、それが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の濫用として無効になる」(最高裁第二小法廷 昭和50年4月25日 判決「日本食塩製造事件」)、「普通解雇事由がある場合においても、使用者は常に解雇しうるものではなく、当該具体的事情のもとにおいて、解雇に処することが著しく不合理であり、社会通念上相当なものとして是認することができないときには、当該解雇の意思表示は、解雇権の濫用として無効になる」(最高裁第二小法廷 昭和52年1月31日 判決「高知放送事件」)との各判断を示して、判例としての解雇権濫用法理が確立しました。そして平成20年3月1日に施行された労働契約法第16条において、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして、無効とするとする。」として解雇権濫用法理が条文化されるに至りました。

つまり、使用者の解雇権は民法で認められた私法上の権利であるものの、その行使に当たっては、労働契約法第16条に定める解雇権濫用法理により実際上の制限が加えられ、結果的にごく限られた要件を満たす事由がある場合に限り、解雇有効と判断されうるということになります。

解雇の効力判断に当たっての主張立証責任

民事紛争の究極的な解決は、裁判所による、実体法上の権利の存否や法律関係の確定です。

権利とは抽象的な概念で、法律により観念されるものです。その権利の存否の判断に当たっては、実体法と言われる民法や労働契約法、労働基準法等権利義務に関して規定した法律に照らして、法律の要件に該当する具体的事実があると認められる場合には、その法律の効果が発生する(権利がある)という方法により行います。実体法は、記述のされ方は様々ですが、概ね、ある事実(F)がある場合には、法律効果(K)=法律上の権利が発生する(消滅する)という書き方になっています。ここである事実(F)とは法理効果を発生させる要件であり、要件に該当する具体的事実を要件事実と言います。ある法律の要件は何かということについては、研究者にによる解釈や、労働基準法等いわゆる行政法については行政による解釈などいくつかありますが、最終的には司法機関である裁判所が解釈することにより確定することになります。

 

 

 

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