使用者が労働者を解雇する場合、労基法に定める解雇に係る手続きを踏む必要があります。以下に解雇の手続きに関する説明をします。

解雇予告と解雇予告手当

使用者が労働者を解雇する場合、原則は、普通解雇と懲戒解雇とに拘らず、使用者は労働者に、解雇日の30日以上前までに解雇予告をしなければなりません。使用者が労働者を、解雇予告をせずに解雇する場合、使用者は労働者に対して、解雇予告に代えて解雇予告手当の支払いが必要となります。解雇予告手当の額は、{30日ー(解雇日ー解雇予告日)}×1日当たりの平均賃金額、です。

例1)7月3日に同日付での解雇(即日解雇)を通知した場合
{30日ー(3日―3日)}×1日当たりの平均賃金額=30日×1日当たりの平均賃金額
以上から、30日分の平均賃金を解雇予告手当として、使用者は労働者に支払わなければなりません。
例2)7月3日に同月15日付での解雇を通知した場合
{30日ー(15日―3日)}×1日当たりの平均賃金額=18日×1日当たりの平均賃金額
以上から、18日分の平均賃金を解雇予告手当として、使用者は老労働者に支払わなければなりません。

なお、解雇予告手当を支払う場合の支払時期は、解雇予告をした日です。したがって、即日解雇をした場合にはその日、解雇予告をした日から解雇日までの間が30日未満の場合は解雇予告をした日に、解雇予告手当を、使用者は労働者に支払わなければなりません。

万が一、使用者が労働者を解雇した場合に、本来であれば解雇予告手当の支払いを要するにもかかわらず、使用者が労働者に解雇予告手当を支払わなかった場合、つまり使用者が解雇予告期間として30日以上を設けなかった場合、この解雇は有効なのかということが問題になります。判例上は、使用者が即日解雇にこだわらない限り、解雇通知をした日から30日を経過した日か解雇予告手当を支払った日を以て解雇の効力を生じるとしています(最高裁昭和35年3月11日判決「細谷服装事件」)。この解雇通知をした日から30日を経過するまでまたは解雇予告手当を支払った日までの間は、使用者の解雇手続きの瑕疵により労働者が就労できなくなるものですから、使用者は労働者に対して、労基法上の義務として、平均賃金の6割に30日を乗じた休業手当の支払い必要となり、また民事上の問題としては、民法第536条2項により、使用者は労働者から、平均賃金にとどまらず、通常勤務した場合に支払われる賃金の全額の支払いを請求されることもあります。

解雇予告が除外される場合

次の場合は、使用者は労働者を、解雇予告をせずに、つまり解雇予告手当を支払わずに、解雇することが許されています。

(1)天災事変等により事業の継続が不可能となった場合

要件として①天災事変等により事業場に甚大な被害が生じたこと、②事業の継続が不可能となったこと、以上の2つを満たすことが必要です。

①天災事変等により事業場に甚大な被害が生じたこととは、地震や水害等の天災により工場や事業場の建物や機械等が倒壊しあるいは類焼する、火災により事業場の建物が焼失する等、事業の再開の見込みが全く立たなくなったような場合です。但しこういった場合でも、事業主の故意や重大な過失がある場合は除かれます。また、事業場の主たる建物や機械等が被災せず事業の再開の見込みが立つような場合は、一部労働者を解雇せざるを得ない場合であっても、解雇予告は除外されません。
②事業の継続が不可能となったこととは、事業の現況、資材、資金繰り等から、全労働者を解雇せざるを得ない状況に陥った場合です。もちろん、この場合は上記①との関連性がある場合であり、例えば、事業主が経営判断を誤って金融難に陥ったとか資材の供給を受けられなくなったといった場合や、税金等の滞納処分を受けた場合、その他法令違反により機械や資材等を没収された場合などは該当しません。

ここで問題となるのが、事業場は直接天災事変等による被害を受けてはいないが、取引先が天災事変等により甚大な被害を受け事業の継続が不可能となったために、原材料や製品等の納入が止まってしまい、事業の継続が困難となった場合は、どうなのかということです。こういった場合も、原則は、事業主の経営判断上の危険負担に属すべき事由によるものとして、解雇予告の除外の対象にはならないものと考えられます。

天災事変等により事業の継続が不可能となった場合の解雇については、管轄の労働基準監督署長に対して解雇予告除外認定申請を行い、解雇予告除外認定を受けることを条件として解雇予告が除外されます。

(2)労働者の責に帰すべき事由により労働者を解雇する場合

労働者の責に帰すべき事由により使用者が労働者を、解雇予告することなくかつ解雇予告手当を支払わず解雇する場合は、使用者は、管轄労働基準監督署長に対して対象労働者に対する解雇予告除外認定申請を行い、管轄労働基準監督署長からの解雇予告除外認定を受ける必要があります。ただし、使用者が労働基準監督署長の解雇予告除外認定を受ける前にした解雇通知は、事後的に労働基準監督署長が解雇予告除外認定すべき事由を認めたときは、使用者が労働者に対して解雇通知をした日に解雇の効力が生じます。

労働者の責に帰すべき事由とは、労働者を解雇予告制度により保護するに値しないほどの、労働者の故意または重大な過失により、企業秩序紊乱や対外的な信用失墜となる事実が労働者にあることによるものです。労働者の責に帰すべき事由に該当するか否かは、労働者の行為だけでなく、労働者の地位、職責、勤務年数、勤務状況等を総合的に考慮して、判断すべきとの行政解釈がなされています。この場合に必ずしも会社の懲戒解雇規定に該当する事由に限りませんが、通常は懲戒解雇規定の対象となる事由です。

労働者の責に帰すべき事由として、次のような解釈例規があります。
(1)軽微なものを除き、事業場内における盗取、横領、障害等刑法犯に該当する行為があった場合。
(2)賭博、風紀紊乱等職場規律を乱し他の労働者に悪影響を及ぼす場合。
(3)雇入れの際の採用条件の要素となるような経歴を詐称した場合。
(4)退職の意思を示さずに他の事業場へ転職した場合。
(5)原則として2週間以上無断欠勤し出勤の督促に応じない場合。
(6)出勤不良又は出勤常ならず、数回に亘って注意を受けるも改まらない場合。
以上は例示であり、これらに拘泥されることなく総合的かつ実質的に判断することとされています。

使用者が解雇予告除外認定を管轄の労働基準監督署に申請する場合、解雇予告除外認定申請書(様式第3号)に必要事項を記入し、必要な添付書類とともに労働基準監督署に提出しなければなりません。
添付書類は概ね次のようなものです。
①労働者名簿
②賃金台帳
③出勤簿
④就業規則の懲戒解雇規定や解雇規定の写し
⑤使用者作成の事件の経緯に係る文書(事業の概要、労働者の経歴、解雇予告除外認定申請を理由付ける労働者の解雇事由)
⑥上記⑤を補足する資料(新聞記事、労働者自筆の文書、その他参考となる資料等)

解雇予告除外認定申請を受け付けた労働基準監督署は、担当する労働基準監督官を決め、その監督官が事実関係を調査します。このとき監督官は必ず対象労働者からの聴取を実施します。聴取の方法は対象労働者の労働基準監督署への呼び出しや、電話などの方法によります。ただし、監督官が、対象労働者と連絡が取れない等聴取を行えないときは、事業場の他の労働者らから聴取するなどして事案の概要を総合的に見て判断することになるものと思われます。
なお、労働者が刑法犯により逮捕され(労働者が被疑者の段階)、起訴された(労働者が被告人の段階)ような場合に、労働者が刑法犯の対象となる行為を否認している場合、労働基準監督署(監督官)は警察や検察、裁判所等の判断にとらわれずに独自に客観的証拠等により解雇予告除外認定事由の有無を判断します。

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