退職勧奨は愛を込めて

新型コロナウイルス感染拡大の影響により売り上げが減少した企業等では、人員の削減を検討せざるを得ないところもあるでしょう。しかし人員削減の方法としていきなり解雇をもって臨むのは、後々、不当解雇ということで労働者から提訴されるリスクがあります。そこで、使用者が、労働者との労働契約を終了させたいという場合、解雇の前に、労働者に対して退職勧奨を行って、労働者が退職勧奨に応じることにより、労働契約を終了させるという方法を検討すべきです。

退職勧奨というのは、使用者の労働者に対する労働契約の合意解約の申込みです。労働者が使用者による退職勧奨に応じた場合には労使双方の合意による労働契約の終了(合意退職)ということになります。法律家の間ではこれが法律行為なのか事実行為なのかという点で議論があるようですが、私は、どちらかというと法律行為ではないかと考えています。

退職勧奨は、使用者の労働者に対する労働契約の合意解約の申込みですから、これに応じるか否かは勧奨を受けた労働者の自由な意思によります。労働者が使用者による退職勧奨に対して、明確にこれに応じないと回答した場合には、使用者はいったん退職勧奨行為を中断しなければなりません。労働者が使用者による退職勧奨に明確に応じないと回答しているにもかかわらず、なお執拗に退職勧奨行為を継続した場合、その行為自体が不法行為であるとして、労働者の使用者(事業主)に対する慰謝料請求の原因となりえます。

退職勧奨行為が不法行為であるとして労働者の使用者に対する慰謝料請求の原因となる行為については、上に述べたほか次のようなものがあります。
・退職勧奨の対象労働者を本社に呼びつける
・怒鳴りつける
・退職勧奨に応じない労働者を長時間別室に閉じ込める
・不穏当な言葉を投げつける
・不当な配転をほのめかす
・身元保証人等に連絡して身元保証人等に説得させる
・退職勧奨に応じない労働者に対して報復人事や賃金の減額等労働条件を不利益に取扱う
・懲戒解雇事由がないにもかかわらずあたかも懲戒解雇事由があるかのような説明をして労働者を欺いて退職勧奨する

使用者は、そうすると退職勧奨に応じるか否かは労働者の自由な意志であり且つ退職勧奨に応じない労働者に対して不法行為ととられるような過剰な行為はできないので、退職勧奨を行うにあたって、労働者が退職勧奨に応じやすくなるような何らかの条件を検討すべきということになります。

通常、退職勧奨に応じる場合の条件として、就業規則等にはない慰労金等を特別に支給することや、再就職活動のための会社のあっせんや人材紹介会社の紹介等の支援を行うことが考えられます。また有給休暇についてはすべて消化させるか消化できないときは買取を検討すべきです。

結局使用者は、労働者に退職勧奨に応じていただくためには何をなすべきか、その条件等、労働者のために真剣に検討し実行すべきということになります。

労働者が使用者による退職勧奨に応じる旨回答してきたときは、退職日や、退職勧奨に応じる条件(例えば慰労金の支給であればその金額や支払い期限や支払方法等)、守秘義務に関すること、清算条項を記載した退職合意書を作成して当事者間でこれを取り交わすべきです。こうしておくことで後々のトラブルを回避することができます。

そして、退職勧奨に応じて退職する労働者に対しては、最終出勤日に「これまでありがとう」のねぎらいの言葉とともに感謝の意を込めて花束を贈りましょう。

退職勧奨は愛を込めて!

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