聴くことの難しさ

こんにちは
特定社会保険労務士のおくむらです。

今日は、相談員の仕事の基本の中の基本、聴くこと、の難しさについてお話しします。

皆さんは、相談員の主たる仕事といえば、労働に係る疑問や悩みについて、いろいろな方からの相談を受けて、これに回答することだと、お考えだと思います。確かに、労働に係る疑問については、法的な観点から回答できる範囲で回答することは仕事ですし、労働トラブルで法的に解決可能な事案であれば、相手方に対してどういった請求ができるか、あるいは請求を受けている場合は、どういった対応を取るべきか、請求したときに相手が争ってきた場合、法的な争点としてどういったものが予想されるか、法的主張をする場合にあれば有利になるような証拠、助言やあっせんといった労働局の紛争解決制度、時には裁判所の労働審判や訴訟についてと、幅広く回答することが相談員の仕事です。

しかし、相談員の仕事の第一は、聴く、ことです。

特に、労働局で採用されて各労基署等で総合労働相談員として勤務する相談員は、他の相談員と違って、場合によってはその場で行政職員である労働基準監督官に事案を引き継ぐようなこともあります。相談者の話す内容を慎重に聴き取って、その内容が労基法等公法に係る違反の疑義のある内容なのか、行政指導等の可能性のない純粋に民事紛争の範疇なのか、判断しなければなりません。

だから、法律に関する必要最低限の知識を相談員は求められるということは当然として、それ以前に、相談者が話す内容から、相談者が意識していることは勿論、相談者が意識していないことであっても、法的に意味のある事柄がないか、聴き取る能力が求められます。

そのためには、相談者により多く話してもらう必要があります。

相談者により多くを話してもらう、相談員の能力、それは傾聴にかかる能力です。

傾聴(Active Listening)というのは、単に耳を澄まして相談者の話を聞くことではありません。

まして、刑事の取り調べのように、訊く、態度でもありません。

傾聴というのは、単に耳を澄まして聞くだけではなく、相談者が、ペラペラと何でも話すことができるよう、話しやすい環境に持っていく能力も含まれます。

つまり、相談者が、相談員が真剣に自分の話すことを聴いてくれている、ということを無意識のうちに感じ取り、あれもこれもと話すように持っていく能力も傾聴の能力一つです。

傾聴技法としては、Open QuestionやClosed Question、受容・共感、無知の姿勢、等々リーガルカウンセリングでの技法があります。

しかし、相談員に求められる傾聴にかかる能力として、その技法も大切ですが、一番大切なのは”忍耐“です。

皆さんは、人に話すことと人の話しを聴くことと、どちらが得意ですか?

恐らく10人中10人は、聴くより話す方が得意でしょう。私もそうです。特に他人が話している内容で、私の知識をくすぶるような内容は、その人の話を遮ってでも、話しをしたくなります。

逆に、他人がする自慢話は、ほどほどであれば聴いていて楽しく感じますが、度が過ぎると負の効用が逓増してきます。

相談者は十人十色、千差万別です。中には、同じような話を延々と繰り返す人もいます。

私が労基署の課制署で相談員をしていた時、現在年金暮らしをしている、やくざから追い回されて大阪から逃げてきて車の中で生活している、と言って相談に来た少し体臭がある男性の話を2時間以上も聴いたことがあります。結局その男性は何を知りたかったのかというと、一番近い年金事務所の場所でした。年金事務所でその男性の現況の確認が取れなかったからでしょうか、男性は年金支給日に年金の振込がなく困っていると言っていました。

傍から見ると、やくざの利益になるような事や物をその男性が有しているようには見えません。私の目には、その男性が精神的に疲れて病んでいるように映りました。きっとその男性は普段、人との会話も余りなく、無意識的に誰か人と喋りたかったのでしょう。

私は2時間以上、その男性の話をほぼ一方的に聴いていました。

聴くは話すより難し、です。

 

 

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