労基署の組織ー労災課ー

こんにちは
特定社会保険労務士のおくむらです。

今日は前回に引き続き、労基署の組織についてお話ししたいと思います。

前回は、労基署の組織について、中規模署~大規模署では方面制が敷かれていること、小規模署~中規模署では3課制または2課制となっていること、そして安衛課について簡単にお話ししました。
前回のブログはこちらです>>>労基署の組織ー安衛課ー

今日は労基署の組織の一つ、労災課についてお話しします。

大規模署では、監督課、安衛課、労災課、業務課、といった課ごとに電話番号があり、用件がある人はその内容に応じてそれぞれの電話番号に架電すれば、直接目的の課へ繋がります。

しかしいわゆる課制署と言われる労基署の場合、電話番号は一つしかありません(もちろん他にファックス専用の番号があります)。そうすると、監督から安衛、労災、庶務に至るまで、いろいろ目的や用件が異なる人が、一つの電話番号に架電してくることになります。

労基署に電話をかけてくる人は、ほとんどが一般の方ですから、電話が通じればすぐに自身の用件を話し始めます。

私が相談員になりたての頃、電話がかかってきたら出るようにと監督課長から指示されたので、かかってきた電話を片っ端から出ていました。一応社労士ですので、架電者の話の内容から、おおよそ、これは監督官へ繋げばいい、これは安衛課への用件だ、これは労災課だ、これは労働相談だ、と判断できていました。しかし、労災に関してはその内容によりさらに担当事務官が異なるというところまでは知りませんでした。

また、労災の指定病院の事務従事者や社労士など、労災についてある程度知識のある人が労基署に電話をかけてくる場合、5号の件でとか、針刺しの件でといった、専門用語でいきなり用件を伝えてくることがあります。5号とか8号といった番号は、労災の療養補償給付支給請求書や休業補償給付支給請求書の様式番号なのですが、恥ずかしながら私は初め、これが労災のどの給付の支給請求書の様式だか分かりませんでした。また、ある時、電話でいきなり様式23号のことでと言われたので、私はてっきり労災の請求書の件だと思い、労災課の事務官に「23号の件で電話が入ってます」と伝えたところ、事務官はきょとんとして、「それは死傷病報告でしょ?」と笑われたことがありました。様式第23号は、労働者が労災で4日以上休業した場合や死亡した場合に、労基署に提出する書類ですが、これは安衛法上使用者に提出が義務付けられているもので、受け取るのは労基署の安衛課となります。

針刺しというのは、病院等で患者さんに使用した注射器の針を誤って看護師さんらに刺してしまう事故です。針が刺さるだけであれば大したことはありませんが、患者さんに注射した後の針には、血液などが付着しており、そこからいろいろな感染症にり患することがあります。針刺し事故は案外侮れない事故です。

ホントは監督課よりも怖い労災課?

労基署で電話対応をしていると、社労士の私には意外だったのですが、労基署にかかってくる電話の恐らく半分以上は労災課への電話でした。私は頻繁に是正勧告や指導したり、場合によっては送検することがある監督関係の問い合わせ等が労基署への電話としては多いのだろうと思っていました。

労災課への電話といってもその用件の内容によって、担当の事務官が異なります。したがって、用件の内容によって、それぞれの担当の事務官につながなければならないのですが、私は相談員になりたての頃、そのことが分かっていませんでした。

労災課には、休業(補償)給付担当、療養(補償)給付担当、三者行為・通勤災害担当、年金・一時金担当、そして適用・徴収担当とそれぞれ分かれていました。

休業補償給付と療養補償給付に関する問い合わせについては、電話をどちらの担当に回しても問題はなかったのですが、通勤災害の場合の休業給付や療養給付については注意が必要です。通勤災害の多くが交通事故によるものであり、交通事故の場合は事故の相手方(通常は加害者)の自賠責保険や任意保険により、休業中の所得補償や療養費、後遺障害に対する補償が優先されます。また、通勤の中断や逸脱の最中の事故の場合労災の対象とはなりません。こういったことからでしょうか、通勤災害による労災に関して、それ専門の担当事務官がいます。通勤途中の事故に関する問い合わせや来署者については、それ専門の担当事務官に繋がなければなりません。したがって、休業や療養に関する問い合わせ等の場合、仕事中のけがや病気か通勤途中の事故かを確認する必要がありました。

労災課には適用・徴収担当の事務官もいました。適用・徴収とは労働保険関係の成立や事業の変更・廃止(保険料の清算)の手続き、年度更新(概算・確定申告)、そして労働保険料の徴収事務等のことです。

この適用・徴収の担当事務官の仕事を、私は相談員の仕事の傍らで垣間見ることがありました。時々、労災課長と適用・徴収の担当事務官が「第三債務者」とか「差押え」といった言葉を使って会話していその話の内容を耳にすることがありました。

労働者を一人でも雇入れている事業主は労働保険関係を成立させて、毎年労働保険料を納付しなければなりません。しかし中には、労働保険料を納付しない事業主もいます。こういった事業主に対しては、適用・徴収の担当事務官は督促状を発し、電話をかけ、事業場を訪問するなどして、粘り強く労働保険料の納付を促します。事業主の中には経営状態が芳しくなく保険料を一時に納付することができない場合もあり、こういった場合には保険料納付の猶予や分割での納付にも応じています。

しかし、再三の督促にもかかわらず何らの連絡もせず、又保険料の納付にも一向に応じない事業主に対しては、適用・徴収の担当事務官は最終手段として、事業主の財産を強制的に調べて差押えることになります。

事業で営業活動を行っている場合、ほぼ間違いなく売掛金が発生しています。労働保険料を徴収する立場にある国からすると、労働保険料を滞納している事業主の売掛金(債権)は第三者債務です。この第三者債務は国からしてみると、美味しい差押え対象の債権といえます。ですから国(労基署)は保険料を滞納している事業主に対して支払い義務がある事業主や個人(第三債務者)の債務を差押える方法により、未納の労働保険料を回収します。

もっとも、事業主の財産差し押さえは、労働保険料が未納となってすぐに行われるわけではありません。通常は労働保険料の未納が発生して何年か経過した後に行われるようです。そうすると労働保険料を滞納している事業主は、その間に第三債務者もいなくなり、もちろん会社名義の銀行の預金口座も空っぽ、財産がほとんどなくなって、差押さえるものが何もないということもあります。

労基署の窓口に訪れた労働保険料を滞納しまくっていた事業の代表者が、「差押さえてもらってもかまいませんが、財産は全くないので、ホント何もないですよ」と涼しい顔で開き直っていたのを私は聞いたことがあります。

とはいえ、事業主が再三の督促にも応じず労働保険料を滞納していると、徴収担当の事務官はためらうことなく事業の財産の差押えを行います。私が相談員1年目のとき、労基署の窓口に訪れた労働保険料を滞納している事業の代表者に対して労災課長が「このままでは会社の財産を差し押さえることになります」と語気を強めて言っていたのを今でも覚えています。

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