個別労働関係紛争解決制度-助言制度-

こんにちは
特定社会保険労務士のおくむらです。

昨日、厚生労働省雇用環境・均等局から「平成29年度個別労働関係紛争解決制度の施行状況」(←詳細はクリック)が公表されました。

個別労働関係紛争、とは労組などに加入していない労働者個人と事業主との間の紛争、つまり労使トラブルのことです。そして、ここでいう解決制度とは、個別労働関係紛争解決促進法に基づく、労使トラブルに係る労働者や事業主等からの相談と、各都道府県労働局長による助言・指導、とあっせんの制度のことを指します。

相談に関しては、労働に関することであれば、労働局や各労働基準監督署に配置された総合労働相談員や労働基準監督官が、広く何でも相談に応じています。
このうち、労働基準法違反等労働基準監督署での監督指導等の対象となる事案については労働基準監督署で対応することとなり、雇用均等三法に関しては、相談までであれば総合労働相談員で何とか対応できますが、助言や指導、紛争解決のための調停制度の利用を希望する労働者等については、労働局の雇用環境・均等部(室)が行政指導や調停等を行うのでそちらで対応することとなります。その他の公法に係る相談については、それぞれ専門の行政機関や部署がありますので、各行政機関や部署を紹介することになります。

個別労働関係紛争解決促進法に基づく紛争解決制度としての、助言・指導とあっせんについては、総合労働相談員をやっていても、どの程度までだったら、助言の申し出を受けていいのか、あっせん申請を受け付けていいのか、迷うことがあります。

個別労働関係紛争解決促進法に基づく助言とは

個別労働関係紛争状態にある労働者や事業主等の当事者から、紛争がさらに拡大しないように、法令や判例(裁判例)などから法的な見解を示して、万が一紛争解決のために訴訟に至った場合などの当事者のリスク等を説明して、当事者間で早期に円満に解決を図ることを援助する制度です。

例えば、労働者からパワハラに関する相談を受けた場合、その労働者に、上司や人事担当者らに対してパワハラの事実を報告して改善を求めているかどうかを確認した上で、労働者が上司や人事担当者らに対してパワハラの事実を報告し改善を求めているにもかかわらず、何ら職場環境の改善が図られていないという場合には、労働者から助言の申し出を受けて、総合労働相談員が、事業所に架電して、労働局の総合労働相談員の身分を明かして、人事担当者らに、事業所の労働者から助言の申し出を受けたこと、助言制度の目的等を説明して、労働者が申し述べた事実関係についての確認を行い、パワハラを放置した場合に予想される事業主のリスクを説明して、事実関係の調査と、パワハラと思われる事実を事業所内で把握した場合にはその善処策を講じることを、お願いすることになります。

上に述べた例は口頭助言の場合ですが、他に文書助言(文書指導)というものがあります。文書助言とは文字通り、文書で行う助言のことです。助言のほとんどは、総合労働相談員が事業所に架電して口頭で行いますが、現在、有期労働契約の下で働く労働者の、無期転換申込権の発生を阻害する目的で行われた契約更新拒絶(雇止め)については、労働局が事業所に対して文書を発布する方法で助言を行っています。

なお、助言は、法律上、各都道府県の労働局長名で行うことになっており、各労基署に配置された総合労働相談員が口頭助言を実施するときは、労働局総合労働相談員として実施します。

私もこれまでに何度か、労働者からの申し出を受けて事業所の人事担当者に対して、助言を実施したことがあります。内容は、労働条件の不利益な変更、解雇、年次有給休暇、懲戒処分等々です。

助言は、当事者の一方である労働者からの相談を受けて実施することがほとんどですが、当然、労働者が申し述べる事実のみに基づいて助言を実施することになります。そこで会社に架電して、労働者が申し述べた事実について人事担当者に確認すると、これまた当然と言えば当然かもしれませんが、労働者とは別の角度から、あるいは労働者が私に話していなかった、事実を主張してくることがほとんどです。

以前、私が解雇の件で相談者からの相談を受けて実施した助言では、会社の人事担当者から、労働者が私に話していなかった事実を多く聞くこととなり、さてこれはどうしたものかと悩んだことがあります。
通常、解雇に関しては、多少労働者に責任がある場合であっても、訴訟に至った場合、その効力の判断に当たっては、事業主が多くの主張立証責任を負うこととなり、事業主にとって厳しい判断になることも間々あるという説明ができるのですが、その時に限っては、「そういう事情だと、会社も大変だよな~」と思ってしまいました。

もっとも、その解雇の件を除いては、私が助言のために架電したときに、会社の人事担当者が私に話す内容は、同情できる部分はあっても、法的にはどうなの?ということがほとんどでした。

私が実施した助言は、労働条件の不利益変更に関するものが一番多いのですが。
労働条件は、労働契約の内容ですから、その変更は就業規則等の定めに基づいてなされる場合を除いては(この場合でも人事権の濫用として無効の判断や、損害賠償請求容認の判断が裁判所から下ることがあります)、労使間の合意が必要です。特に賃金の減額を伴う労働条件の変更に関しては、最高裁判所は度々、労働者が賃金の減額に合意するに足る客観的な事情(理由)があることを効力発生の要件として指摘しています。単に、労働者が労働条件の変更に同意したという事実だでは、変更後の効力があるとは言い切れないのです。ましてや、使用者の労働者に対する一方的な通知により、労働条件を変更することはできません。

年次有給休暇に関する助言は、労働者が上司に対して、年次有給休暇を取りたいと申し出たときに、上司にその労働者の年次有給休暇権の行使を妨げるような言動があったときに、労働者の希望する年次有給休暇日が到来していない場合に限り実施します。
年次有給休暇は、労基法で定める使用者の義務ですから、年次有給休暇権を有する労働者が使用者に対して、年次有給休暇日を指定して年休を請求した場合、使用者はいわゆる時季変更権を行使する場合を除いては、労働者が指定した日に年次有給休暇を付与しなければなりません。使用者が年次有給休暇を付与しなかったというのは、具体的には、労働者が年次有給休暇として指定した日を欠勤として扱い、その日の賃金(通常支払われる賃金又は1日当たりの平均賃のいずれかで就業規則で定める方)を支払わなかったときです。
したがって、労働者が年次有給休暇日として指定した日が過ぎている場合は、労基法違反の疑義が生じることとなるので、その日に係る賃金支払い日にその日の賃金の支払がなければ、法施行事務で対応し、助言の実施にはなりません。

次回は、個別労働関係紛争解決制度の、あっせん、についてお話しします

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