退職届は退職日の3ヶ月前までに提出すること、は有効か?

こんにちは
特定社会保険労務士のおくむらです。

前回は、労働契約の終了についてお話ししました。
労働契約の終わり、に関する相談は労使を問わずよくあります。

労働者が定着しない理由は会社にある、筈?

以前、会社の使用者からの相談で、年次有給休暇の付与日数についての相談のついでに、ちょっとした愚痴を聴いたことがあります。

曰く「せっかく採用した労働者が、すぐに辞めてしまう。それが一人とかだったらまぁ仕方がないかとも思うが、ここ数年、若い人を採用したら、皆長続きせずに辞めてしまった。今の若い人には、何というかモラルというものがないのかなぁ。」

「それは、オタクの会社に間違いなく何らかの原因があります」と、私の前歯の後ろまで出かかっていた言葉をグーっと飲み込んだのは言うまでもありません。
若い労働者が長続きせずに会社を辞めてしまう原因を、若い労働者のモラルの欠如に求めるというのも、人材難のこのご時世の社長の、今風の愚痴なのかとも思います。しかし、日本国憲法では、職業選択の自由を、国家が国民に保障しています。

私は、その方にこうアドバイスしました。「退職した方に、お手紙と返信用封筒と、クオカード1,000円分でも同封して、アンケート形式で、退職した理由を尋ねてみてはどうですか?」

エン・ジャパン株式会社の調査によると、退職経験のある求職者に聞いた「ホンネの退職理由」では、第1位に「人間関係が悪かった」が挙がっています。

退職届作成提出代行業者

さて、労働者からの相談で多いのは、解雇や退職強要に関することもあるのですが、それとは逆に、会社が退職をさせてくれない、というものも結構あります。
口頭で退職を打診したら認めてくれない、辞めるなら代わりの人間を連れて来いと言われた、辞めたら訴えると言われた(どこに訴えるのかな?)・・・etc

最近受けた相談で驚いたのが、退職届の提出代行業なるものがあることでした。会社の人事担当者からの相談で、「文書で本人に代わって退職届代行業者から退職届が届いた。本人に直接連絡するなとある。会社のカギを返してほしいのだが、本人に直接連絡してはいけないのか?」といった内容でした。
私は、そんな業者がいるとは知らなかったのでビックリしました。恐らく文書作成代行の行政書士だろうと思います。

私は、会社の人事担当者に「退職の意思表示を本人に代わってするのであれば、代理人であり、弁護士しか考えられない。弁護士が代理人になっているのであれば、弁護士に対してしか連絡することはできない。そうではなく、単に退職届の作成を代行しているのであれば、直接本人に連絡してもかまわない。というか本人に連絡しなければならない。文書作成代行者が代理人を騙るのは弁護士法違反になる。」

退職の意思表示というのは、私が思う以上に殊の外、労働者にとっては難しいことなのでしょうか。

民法第627条は任意規定それとも強行規定?

退職に関する労働者からの相談では、退職日のどれくらい前までに退職届を会社に提出すればいいか、といったものもあります。

この点については、前回もお話ししたように、民法第627条に定める2週間の予告期間で足りるのか、就業規則に退職届の期間に関する定めがある場合には、就業規則の定めに従うべきなのか、私も正直迷うことがあります。民法第627条に定める予告期間を強行規定とする学説があり、その学説に従えば、退職届は退職日まで2週間以上の間を空けて会社に提出すればよいということになります。これに対して、627条を任意規定と解すれば、就業規則に定める予告期間に合理性があるかどうかというところが問題になります。

退職の予告期間に関して、私が意外に多いなと思ったのは、「退職届は退職日の3ヶ月前までに提出すること」、と就業規則に定めている事業所があることでした。そういった相談をしてきたのは看護師さんと介護事業所に勤務するパートタイム労働者でした。どちらも労働者不足が問題になっている業種です。

民法627条を任意規定と解するとしても、退職の予告期間を3ヶ月とする就業規則の定めは、通常は合理性がないし、職業選択の自由の大原則に照らし、公序良俗に反するのではないでしょうか?

民法第627条については、最高裁判所の判例がないので、これを任意規定と解するか、強行規定と解するか、現時点では、労働者に都合よく解することができるのではないかとも思います。

 

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