労働契約の終了

皆さん、こんにちは
特定社会保険労務士のおくむらです。

相談員として受ける相談、社労士とし受ける相談、どちらの場合であっても、労働契約の終了に係る相談は多くあります。最近は、労働契約の終了、賃金不払い、パワハラで、相談の8割くらいは占めるのではないでしょうか。

労働契約の終了に係る相談では、10年くらい前までは、解雇の効力に関する相談が結構ありましたが、最近は、使用者に解雇は後々面倒といった認識が広がってきたのでしょうか、ストレートに解雇の効力を検討するような相談は減ったように思います。

その代わりに増えてきたのが、相談を受ける立場として、解雇なのか、合意退職なのか分からない、退職強要ではないか、といった相談です。こういった相談では、多くの相談者は、「解雇されたけど、不当解雇ではないか」とか「解雇されたので30日分の賃金を支払ってもらえるのではないか」というように、解雇をされたという認識で相談をしてきます。しかし、よくよく聞いてみると社長から「辞めてくれと言われたので、出勤しなくなった」、「この退職届に名前を書いて出してくれと言われたので、言われるがままに名前を書いて出した」といった、少なくとも法的には解雇と判断することが難しいような相談が増えてきたように思います。

そこで、まず労働契約の終了にはどういった形態があるかもう一度確認しておきましょう。

労働契約の終了

私は大きく4つに分けて考えています。すなわち、①解雇、②辞職、③合意退職、④労働契約の自動的終了、以上の4つです。

解雇

使用者が、労働者に対して一方的に労働契約を解除することを、解雇と言います。解雇は大きく分けて、懲戒解雇と普通解雇とがあります。同じ解雇でも、懲戒解雇は使用者の懲戒権の行使としての解雇であり、普通解雇は使用者の解雇権の行使です。

懲戒解雇は、罪刑法定主義類似の原則により、就業規則等に懲戒の種類として懲戒解雇が規定され、かつ懲戒解雇の対象となる事由が厳格に規定される等労働契約の内容たる労働条件として明確に定められ、さらに、これらの規定が労働者に周知される手続きがとられていなければ、使用者は懲戒権を行使できません。

普通解雇は、必ずしも明文化された解雇規定が求められるわけではありませんが、就業規則の作成義務がある、常時10に以上の労働者を雇入れている事業場では就業規則の作成が労基法により義務付けられており、就業規則の絶対的記載事項として、退職や、労働者を解雇する場合があるときは、解雇の理由も記載することが使用者に義務付けられているので、就業規則を作成するときは、解雇規定を設ける必要があります。

普通解雇はさらに狭義の普通解雇と、整理解雇とに分けることができます。

懲戒解雇にせよ普通解雇にせよ、使用者がその権利を実際に行使した後で、仮に労使紛争になった場合、裁判所は、労働契約法第15条や同第16条により、客観的に合理的な理由たる事由の有無や、社会通念上の相当性を、極めて厳格に判断しており、解雇無効と判断されることもしばしばあります。解雇無効と判断されると、解雇日以降事件が解決する日までの被解雇者の賃金について、その被解雇者たる労働者に、使用者に対する賃金支払い請求権が生じることになります。

余談ですが、労働者からの解雇に係る相談で、解雇の事実が解雇通知書等で明らかな場合、その解決は、少なくとも労働者が職場復帰にこだわっていない場合には、私は、主張立証責任の点からして、そんなに難しくはないと思っています。この辺りは機会を改めて、詳しくお話ししたいと思います。

辞職

使用者が労働者に対して、一方的に労働契約を解約する権利が認められているように、労働者にも使用者に対して、労働契約を一方的に解除する権利が認められています。労働者が会社を一方的に辞めることを、講学上、退職と分けて「辞職」と言っています。

労働者からの相談で、労働者が会社に対して退職願を提出したら、会社が退職を認めてくれない、といったものが時々あります。こういった相談を受けた場合、私を含む相談員は、退職願ではなく、「退職届」として退職の意思を使用者に対して表示する文書を作成して提出するようにと、アドバイスします。

辞職でトラブルとなるのは、予告期間に関してです。民法第627条では、労働契約の解約に関して、2週間の予告期間を定めています(解雇の場合は、労基法が民法の特別法としてかつ強行法規として30日以上の予告期間を設けるか、予告に変えて解雇予告手当の支払いを使用者に義務付けています。)。しかし民法第627条は、いわゆる任意規定(と私は考えていますが、強行規定だという学説もあるようです。)であり、当事者間で別の定めをしてもかまいません。そこで、会社によっては、「退職届は3ヶ月以上前までに提出しなければならない」などと就業規則に規定してる場合があります。

就業規則に民法第627条と異なる定めをしている場合、その効力はどうなのかと、正直私も判断に迷うことがあります。例えば、労働者がある程度の役職にあり会社内で重要な地位にあるときは、引継ぎ等に相当の時間を有すると考えられるので、3ヶ月程度の予告期間も合理的ではないとは言えません。また高度の専門的知識を有する場合の労働者も同様です。しかし、通常の正社員、いわゆる平社員や、パート・アルバイトに至っては、引継ぎの時間はそんなに必要ないと考えられます。そうであれば、予告期間は正社員でせいぜい1ヶ月程度、パートやアルバイトの場合は民法の規定通りで十分ではないかと考えます。

相談者が、1日でも早く退職したいという考えを有している場合、民法では2週間の予告期間を定めているので、最低限退職日は退職届を提出してから2週間後にしてください、と私はアドバイスしています。

実際問題として、就業規則で予告期間を1ヶ月と規定している場合に、労働者が2週間の予告期間しか置かずかつ退職の意思表示後2週間を経過した後に退職を強行した場合、使用者としてその労働者にどういった対抗手段がとれるのかというと、その労働者に対する損害賠償請求ではないかと考えられます。しかし、労働者には職業選択の自由を憲法が保障するものであり、それを著しく制限するような長期の予告期間を設ける必要性が使用者に認められるのかといった点や、そもそも労働者が退職することは事業を営む上で当然に予定されることだから、労働者が退職することによって受ける事業主の不利益は予め事業の運営上内包されているべきものです。そうすると使用者として、労働者が退職したことを理由としてその労働者に対して損害賠償請求したところで、裁判所はよほどの理由がない限り会社の主張を認めないでしょう。なお、会社が退職した労働者に対して退職をしたことを理由として損害賠償請求をした事案で裁判所は会社の主張を退け、逆にその退職労働者が会社に対して違法な損害賠償請求をしたとして損害賠償請求をし、これを裁判所が認めた例があります(横浜地裁 平成29年3月30日判決 「プロシード元従業員事件」)。

合意退職

合意退職は、労働者からの申込みのほか、会社の使用者からの申込みとこれに対する労働者の承諾によっても成立します。使用者から労働者に対する労働契約の解約の申込みを、退職勧奨と言います。

退職勧奨に労働者が応じるか否かは、当然ですが労働者の自由意思によります。労働者が退職勧奨に応じないと明言したにもかかわらず、使用者がなお執拗に退職勧奨する場合、その行為自体が不法行為として、労働者の使用者に対する慰謝料等損害賠償請求の原因となることがあります。

労働者からの、社長が一方的に退職日を決めて、退職届に署名するように強いられている、といった相談が時々あります。こういった場合、労働者が退職届に署名すると、表面上法的には退職の効力が発生します。その退職の意思表示の効力について裁判になった場合、その無効や取消を裁判所はなかなか認めません。しかしながら、退職強要行為を原因とする慰謝料等損害賠償請求については、裁判所は容認する傾向にあります。

労働契約の自動的終了

会社に、一定年齢に達したときに労働契約が終了する旨を謳った定年退職の定めがあり、労働者がその年齢に達したことをもって労働契約が終了する場合や、労働者が私傷病により、会社が定めた休職期間に入り、その休職期間満了により労働契約が終了する場合、期間の定めのある有期労働契約の契約期間満了により労働契約が終了する場合、労働契約の自動的終了となります。

期間の定めのないいわゆる正社員に対する定年制については、高年齢者雇用安定法により、65歳までの雇用確保が使用者に義務付けられているので、例えば60歳定年制を設けている場合であっても、使用者は、定年後再雇用により65歳まで雇用しなければなりません。

私傷病により労働者が欠勤せざるを得ない場合に、使用者がその労働者を休職させるかどうかは、一義的には会社の就業規則に休職規定があるかどうかによります。休職規定を設けている場合は、労使間の労働条件であり、使用者は私傷病により欠勤せざるを得ない労働者に、就業規則等の規定で定める期間休職をさせなければなりません。休職期間を満了してもなお、その労働者に復職の見込みがない場合は、就業規則の規定に従い労働契約は終了します。もっとも、就業規則の規定の仕方によってはこれを合理的限定的に解釈して、解雇と判断される場合もあります。これは定年制を設けている場合も同様です。

有期労働契約の下で働いている労働者は、その契約期間満了時に労働契約は終了します。ただし、労使双方が契約更新を希望するときは、新たな労働契約を締結することにより契約が更新され、労働者は引き続き就労することができます。しばしばトラブルとのなるのが、使用者は契約期間満了により労働契約を終了させたい場合に、労働者が契約の更新を希望する場合です。こういった場合、それまでのその労働者の契約更新の状況や、他の有期労働契約労働者の契約更新状況、使用者の言動などによっては、その労働者に継続雇用(次期契約の更新)に対する合理的期待があると判断され、使用者の契約更新拒絶(雇止め)が無効と判断されることがあります。

最近の話題としては有期契約労働者の無期転換申込権です。これについてはまた別の機会にお話しします。

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