あなたは労働者?

こんにちは
特定社会保険労務士のおくむらです。

今日は〝労働者”について、これまでに私が受けた相談の中からちょいとおはなしをしますします。

〝労働者”は、いくつかの法律でそれぞれ定義されています。このうち、労働基準法と労働安全衛生法の労働者の定義は同じです(労働安全衛生法は労働基準法から分離独立した法律ですから当然と言えば当然ですが・・・)。労災保険法や雇用保険法には労働者の定義がありませんがありませんが、それら法律の中で出てくる労働者は、労働基準法上の労働者と同じです。要は、会社等が労働者と労働契約を締結するときに、その使用者に労働条件等について最低限の義務を課すこととなる法律については、その法律の中に出てくる労働者の定義は、労働基準法上の労働者と同義と考えて差し支えありまえんせん。

ところが、労働組合法上の〝労働者”と労働基準法上のそれとでは、定義が若干異なります。

労働基準法上の労働者と労働組合法上の労働者とは若干違う

そもそも労働基準法は、使用者が労働者を雇入れて労働に従事させるときに、その労働者が人たるに値する生活を営むことができるように、国家が民法の基本である契約の当事者間の私的自治に介入する形で、労働契約の内容である労働条件に最低基準を設けて、使用者に最低基準以上での労働条件を設けることを強制する法律です。したがって、労働基準法上の〝労働者”は労働条件の最低基準の適用の対象となるべき人ということになります。
労働組合法は、労働者が、労働条件について、使用者と対等の立場で交渉できるように、団結することを擁護し、労使間で労働条件に係る労働協約を締結するために団体交渉を行うこと等について定めた法律です。したがって、労働組合法上の〝労働者”は、使用者と団体交渉を行い、労働協約を締結することができる対象となるべき人ということになります。

このように、法律の目的とする大もとのところ(その行き付くところは憲法)が2つの法律では異なるので、定義もおのずと異なってきます。

労働基準法上の労働者と労働組合法上の労働者との細かな違いを挙げるとキリがないので、ここでは、労働基準法上の労働者よりも、労働組合法上の労働者の方がより広義に緩やかに判断される、と軽く考えてください。

で、総合労働相談員としてあるいは社労士として、労使を問わずいろいろと相談を受けていると、「ん~、それって労働契約なの」と頭の中で?マークが駆け巡ることがあります。

労働契約か否かで迷うのは、契約の当事者の一方の労働者性について疑問が生じるときです。

労働基準法上の労働者は、使用者の指揮命令を受けて働いて、その対償として賃金を支払われる人

民法では労務供給契約として、雇用、請負、委任の3つの典型契約を規定しています。労働契約は、この内の雇用契約のカテゴリーに含まれます。

雇用契約は、契約の一方当事者が労働することに対して他の当事者から報酬を支払ってもらう契約で、報酬の発生要因は労働そのものです。

これに対して請負契約は、契約の一方当事者が他の当事者から、注文を受けて仕事をして、モノを完成させたり、目的地まで人や物を運んだりしたことに対して報酬を支払ってもらう契約です。報酬の発生要因は仕事をした後の物の完成やサービスの完了です。

委任契約は、当事者がするべき法律行為をその当事者に代わって他者がする契約です。委任契約で特に報酬の取り決めをする場合を有償委任契約と言います。また単に、当事者がするべき法律行為以外の事務等について他者がする契約を準委任契約といいます。準委任契約で報酬の取り決めをすると、有償準委任契約となります。報酬の発生要因は委託を受けて当事者の代わりに法律行為や法律事務等をすることです。

この辺りについて、ときどき「ん~」と考えてしまう相談を受けることがあります。

以前、私が受けた賃金未払いに関する相談です。相談者は、私に、「社長に何回も報酬を払ってくれと言ったけど、支払ってくれない。電話をかけても出てもくれない。」と話しました。それで詳しく話を聴くと、相談者は社長が報酬を払ってくれないから、自分が集めた人間にも報酬を支払えないというのです。「自分が集めた人間、って何ですか?」。

相談者は、土木工事業を営む知人の社長から、現場で人が足りないから手伝ってほしい、報酬は何人分で1日幾ら、といった雑把な口約束を結んで、それで人を集めて、毎日土木工事現場に入っていたようです。

建設工事現場等へは、人材派遣が禁止されています。しかし、工事現場では人手が不足しており、下請け業者等が知人の業者なんかに頼んで、労働者を供給してもらうようなことがしばしばあります。このとき労働者を供給した業者は、依頼を受けた業者から支払ってもらった報酬から労働者に1日1万円程度を賃金として支払って、残りを労働者を供給した業者が受け取ります。こういうのを俗に人夫出しと言っています。そしてこの業者が受け取った分をピンはねなどと言ったりします。人夫出しは法律違反ですが、実際に取りしまろうとするとなかなか難しいところがあるようです。

今回の相談者も、いわゆる人夫出しの類ではないか、と私は考えました。尤も相談者自身も現場に出て働いていたということだったので、そうするとこの場合、相談者を個人事業主として、相談者と相談者の知人との間に請負契約が成立していたということもできます。

そこで、私は相談者に、「あなたの場合、知人の業者さんとの間で労働契約が成立していたとみることが難しいように思う、労働契約でなければ賃金不払いということで監督署が動くこともできない」と説明しました。

なお、下請け業者の報酬の不払いに関しては、監督署では、下請け駆け込み寺、という全国中小企業取引振興協会が行っている相談コーナーを案内しています。

雇用契約であっても労働契約ではない

労働基準法では、雇用契約が成立している当事者であっても、労働基準法の労働者の対象とならない場合もあります。

以前、私が受けた賃金不払いの相談で、次のようなものがありました。
相談者は男性です。相談者は生活保護を受けて、内縁関係にある女性と同居して生活していました。その女性の父親は個人で雀荘を経営していて、相談者は毎日無報酬でその雀荘の営業を手伝っていました。
ところがある日、その女性が別に男を作って、相談者はその女性と別れてしまいました。
相談者は、悔しくて、雀荘を手伝っていた時の賃金の支払を請求したいというものでした。

相談の経緯も何となく、アレなんですが、ともかく、相談者に、善意で手伝っていたのでしょう?と話しても埒が明かないので、家族で営んでいる事業の場合の家族は、労働基準法上の労働者としての対象にはならないから、監督署の調査の対象とはならない、と説明しました。内縁関係であっても、当時は生計を一にしていたのだから、家族です、と・・・

労働基準法では、家族経営の家族(同居の親族)や、家事使用人は適用を除外しています。

また、地方公務員の一般職員については、労働基準法の大部分が適用対象となるのですが、監督機関は労働基準監督署ではありません。地方公共団体の人事委員会や、人事委員会がない地方公共団体にあっては、その首長が監督機関の権限を行使することになります。

以前、地方公務員と思しき人から、何度か長時間労働についての投書を受けたことがありますが、監督署が動くことはありませんでした。

 

 

 

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