相談員の窓口での相談対応業務

こんにちは
特定社会保険労務士のおくむらです。

今日は、相談員の窓口での相談対応業務についてお話をしたいと思います。

監督署の窓口に相談に来署される相談者は、圧倒的に労働者や労働者だった人、労働者の家族が多いですが、感覚的に1割くらいの割合で会社の使用者の方や社労士さんがいます。

窓口に来署された相談者にはまず相談票に記入できる範囲で氏名や勤務先事業所名、事業所の業種や従業員数等を記入してもらいます。
それから相談員が相談者から相談内容を聴いていきます。

相談員が相談内容を聴く上で注意することは、先ずは、労基法違反等監督署の指導の対象となる事案かどうかです。監督署が事業場を指導できる対象となる主な法律は、労基法、最賃法、安衛法です。
来署相談で多いのは、賃金不払いと解雇予告手当の不払いです。この点については後述します。

また、監督署ではなく労働局が事業場を指導することができる法律としていわゆる雇用均等三法があります。雇用均等三法とは、男女雇用機会均等法、育児介護休業法、パートタイム労働法です。雇用均等三法は労働局の雇用環境・均等部(又は雇用環境・均等室)指導課が事業所の調査を行い、助言、指導等を行います。例えば、セクハラに関する相談を受けた場合、相談者が職場環境の改善等を希望しているようであれば、男女雇用機会均等法に基づき、労働局が事業所に対して文書の提出等を命じることができ、かつ指導等を行うことができるので、相談者に対して、労働局で再度相談をするようにと促します。
この他、派遣法に関する相談等については、労働局の職業安定部を紹介することになります。
障害を有する労働者からの相談については、監督官が相談票を作成し労働局へ報告することとなっています。

パワハラ、解雇の効力、退職強要、雇止めなど、公法上の指導の対象とならない事案については、民事に係る相談として、相談者の意向を十分に聴いたうえで、個別労働関係紛争解決促進法に基づく助言や、あっせんの制度を案内します。助言やあっせんについては別の機会にお話ししたいと思います。

さて、来署相談で多いのは賃金不払いと解雇予告手当の不払いだと先述しました。
賃金不払いの場合には、私は相談者に、会社を退職しているのかどうかを確認します。もっとも賃金不払いはほとんどの場合で相談者は会社を退職していますが・・・。相談者が退職している場合は、私は相談者に、事業の使用者に対して賃金の支払を請求しているかどうかを確認します。この時相談者が、請求はしていない、あるいは口頭で請求した、メールで請求した、SNSのLINEで請求した(最近のご時世でしょうか、LINEを使った労使間のやり取りが結構多いように思います。)、といった回答をした場合は、私は相談者に、再度、相談者にて会社に対する、賃金の支払を請求する文書を作成して、これを簡易書留等文書の配達状況が確認できる郵便方法で請求するようにとアドバイスをします。この時作成する請求文書には、請求金額、支払い期限、支払方法(通常は相談者名義の銀行口座に振り込む方法を指定します。)と、相談者の氏名住所、請求先である会社等事業の所在地と名称及び代表者氏名を記載するようにアドバイスします。もっとも、どこの監督署でも賃金支払い請求書のひな型を用意しており、相談者にはそのひな型を手交して説明しています。予告なき解雇の場合で、相談者が解雇予告手当の支払いを会社に希望している場合も同様です。

余談ですが、解雇予告手当の支払いについては、解雇された労働者が会社に対して積極的に請求すべきものかという点については、私は少々疑問を持っています。解雇は30日前までに予告をすることが労基法上の原則であり、予告なき解雇は使用者が労働者に対して解雇予告手当を支払わない限りその効力は否定され、この場合解雇を通知してから30日の経過を待たなければ解雇の効力が生じないことになります。そうであれば、予告なき解雇通知に関しては、労働者は会社に対して、解雇予告手当の支払いを請求するのではなく、民法第536条2項に基づき、使用者の都合により労働者が就業できなかったとして労働者の反対給付としての賃金の支払いを会社に請求すべきではないかと私は考えます。もっともココは細かなことなので、もちろん相談者には話をすることではありません。

相談者が、会社に対して、賃金の支払や解雇予告手当等の支払いを文書で請求したにもかかわらず、文書で記載した支払期限までに会社が賃金を支払わずかつ何らの回答もなさないときは、再度来署して申告するようにとアドバイスします。

申告とは事業場に労基法や安衛法違反の疑義がある場合に、労働者が労働基準監督署に対してその事実を報告して是正のために適当な措置を求めることです。労基法では第104条に、安衛法では第97条に規定されています。使用者は申告をした労働者に対して解雇等不利益な取り扱いをしてはいけません。
申告を受けた労働基準監督署は、必ず対象事業場を調査することを義務付けられるものではありませんが、現状ではほぼ確実に監督官が事業場を調査し、法違反が認められれば、事業場の責任者(使用者)に対して是正勧告という形で指導を行っています。

もっとも、賃金不払いについては、特に労働(残業)時間が争点となるような場合で、監督官が客観的な証拠資料によっては労働時間を特定できない場合、申告をした労働者が満足するような指導を監督官が事業場の責任者に対して行えないこともあります。こういったときは労使間で落としどころを図って和解するか、さもなくば労働者が裁判所に民事訴訟を提起するか労働審判を申立てるなどの方法により民事的に解決を図ることになります。

なお、申告は労基法違反や安衛法違反により不利益や身体的危険が生じている労働者(であった者)が自分でしなければなりません。その家族等が本人に代わって申告をすることはできません。もっとも申告は口頭でするほか、文書の提出によってもできますので、申告書を作成しこれを郵送する方法によってもできます。社労士についても、申告書の作成代行や提出代行等の手続き代行はできますが、陳述等の事務代理はできないということになります。

以上は、退職した労働者の相談を受けた場合のハナシです。では、退職しておらず現に会社に勤務している労働者からの労基法違反や安衛法違反の疑義に係る相談を受けた場合はどうするのか。こういった場合はケースバイケースですが、私の場合は、労働者による公益通報として直ちに監督官に引き継いで監督官に対応してもらうようにしています。
公益通報者保護法という法律があります。これは労働法の内の一つです。労働者(労基法上の労働者)が会社内の使用者や従業員、代理人等の犯罪行為について、行政機関等に対して通報した場合に、その労働者に対して使用者が解雇等不利益な取り扱いを禁止する法律です。労働者からの公益通報を受けた行政機関は、必要な調査を行い、通報の対象となった法違反の事実が確認されたときは、法令に基づく措置等適当な措置を取らなければならないことが定められています。
労働基準法と労働安全衛生法は公益通報の対象となる法律です。したがって、労基法上の労働者に該当する、現に事業場で勤務する方からの労基法違反や安衛法違反の疑義に係る相談については、公益通報として、申告と同様に、監督官が、対応し、事業場を調査し、法違反が確認されたときは、当該事業場に対して是正勧告等を行わなければなりません。

私が小規模署で相談員として勤務していたとき、社会福祉施設で勤務する看護師の資格を有する女性が窓口に相談に訪れたことがあります。私がその女性の相談を聴いている中で、ふとその女性が事業場で健康診断を受けたことがないと漏らしました。その女性は5年以上その事業場で勤務していました。私は、その事業場に安衛法違反があるのではないかと考え、すぐに安全衛生専門官に相談を代わりました。
また、私は以前、テレフォンオペレーターとして勤務する労働者から、目の前30センチくらいのところにピカピカ光る赤色灯のようなものを設置され、それ以降目がちかちかして頭痛に悩まされている、との相談を受けたことがありました。私は、安衛法に違反(安衛法23条、安衛則605条)しているのではないかと考え監督官に相談しました。結局、監督官が安全衛生専門家に確認して安衛法違反には当たらないとの結論だったので、公益通報ということにはなりませんでしたが。。。
現に事業場に勤務している労働者からの法違反の疑義に関する相談については、慎重な対応が求められることがあります。

余談ですが、安衛法(=労働安全衛生法)は法律の条文こそ123条までしかありませんが、その委任規定である政省令、すなわち安全衛生施行令や安全衛生規則に膨大な条項があり、他にボイラー及び圧力容器安全規則(=ボイラー則)といったマニアックな規則まであります。したがって、相談者の相談内容が安衛法に係るものである場合は、通常は、速やかに安全衛生専門官か監督官に引き継ぐことになります。

最後に情報提供について軽く触れておきます。相談者が、自身の権利救済を希望するのではなく、家族や同僚のために、家族が勤務している会社や以前相談者が勤務していた会社の法違反の疑義について監督官の調査等を希望する場合は、情報提供という形で、記録を残しておきます。この記録は内容の重要度に応じてランク分けされ、監督官が、調査が必要とだ判断したときは、その事業場は監督対象となります。もっとも、申告の場合であれば、ほぼ確実に監督官が事業場の労働条件や労働環境等を調査しますが、情報提供の場合は、調査するか否かは監督官の判断に委ねられ、かつ申告の場合に比べ調査内容がどうしても事業場の全体的な労働条件や労働環境になるので、個人の権利救済という点では弱いものになるようです。

 

 

 

 

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